After The Long Viewing 6
ミラー: ボス。ウィッカーマンという者についてだが、ようやく全貌がつかめそうだ。だが、それに、もはや意味はないかもしれない。 何処の誰かは解らない。だが、サイファー、そして世界に介入した一人の人間はいる。それは確実だ。だが、そいつもウィッカーマンという者の一部にすぎない。
ウィッカーマンとは、ここしばらくの世界の動きそのものだ。一人の人間の形では存在していない。 その『誰か』に関わった存在が二つある。第三の子供、そしてザ・ソローだ。そして、ウィッカーマンがいる場所、それは俺たちの言葉だ。 サイファーにはもう、ゼロもスカルフェイスもいない。そして、後を継ぐ予定の『愛国者達』が稼働していない今、最終的に責を負う者がいない。つまり、サイファーの全員が、全てを知り、全てを動かすことを恐れている。 ウィッカーマンはそこに介入した。自分という存在があることを示し、全員に『ニード・トゥ・ノウ』を意識させる。明確な言葉や文書を示さずに、だ。 三つの存在の邂逅は、過去から現在に至る膨大な歴史の情報を、『誰か』が持つ『一つの意志』の下、集積、再構成され、数々の言葉となって世界に出ていった。
死者たちの囁き、生者たちの叫び、それらは犠牲者の声(Voice of Victims)だ。 それは言葉以上の何か(More than Words)であり、聞こえない音(Sound of Silence)だ。 それらが、ザ・ソローと第三の子供を介して、『誰か』を動かし、ウィッカーマンという虚構を作り出した。俺たちやサイファーを動かし、世界全体を動かした。まさに時代の意志であるかの如く。 明らかになった幾つかの仕掛けや、未だ明確にならない何か。それらを考え合わせるとこうだ。
米ソをはじめとする軍事先進各国は、軍拡を進め、他国への介入を強めれば強めるほど自らの首を絞める結果になる。 幾つかのばらつきはあるものの、個人の生存というレベルにおいて、世界のパワーバランスは横一線。グラウンド・ホライズンとでも言うべき状態だ。 それでも今この瞬間、命の危機に瀕している者たちもいる。つまり、彼らの命で俺たちは生きているようなものだ。 衝動に駆られたら動くことは抑えられそうにない。自分で正しいと思ったら、信じていくより他はない。命があるうちに…… 生きることが闘いなら、あのカリブ海でボスが宣言した『アウター・ヘブン』、それはすでに実現してしまっているんだ。
スネーク: すでにあったもの…… それこそが最高のもの……
ミラー: 途方もない話で信じられない。俺はまだあのカリブ海で、もしかしたらそれ以前のコロンビアや日本のどこかで夢か幻を見ているんじゃないか。そんな気分だ。なあ、ボス。俺たちはこれから……
スネーク: カズ。今、決心が着いた。俺はどこかで、ビッグボスのファントムであることを迷っていた。怯えている何かがあった。 だが、幻影にも役割はある。出来ることはある。俺自身の望みを持つこともできる。 俺は、俺の下に集った人々の声、言葉を自分の意志の下に解釈し、それらと共に戦う。 その結果、世界から憎まれ、疎まれ、俺たちを排除しに来る何かがあるとしてもだ。
だが、俺は信じる。俺たちを倒しに来る誰かは、サイファーやゼロ、その遥か以前のカオスから来る巨大な敵に立ち向かう何かであると。 そして、俺たちがそいつに立ちはだかる壁ならば、その壁が高く強大であればあるほど、そいつの力は強くなる。俺たちが倒れれば尚更だ。
俺は負けるつもりは無い。だから俺も俺の道を信じて進む。そして勝ったものが後を継ぐ。 だが、勝ったものが継ぐのはボスの名ではない。新たな蛇の名でもない。 そいつの役目は、ゼロに消され、ゼロへと消された人々の声を世界に残すことだ。 時代の流れに隠れながら、歴史のどこかに残される。その物語の紡ぎ手だ。 どんなに、目の前が暗くても日はまた昇る。 今が闇の時ならば、太陽に照らされた世界がすこしでも良いものになるよう、俺自身の影を刻み付けよう。
ミラー: ……ボス!
スネーク: ようやくお前に言える。カズ、待たせたな! (了)
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