虐殺の文法のリバースエンジニアリングと幾つかの考察

1.分析

 アメリカ合衆国の内戦の原因として『虐殺の文法』というものの存在が明らかになった。英語圏に広まった大暴動の原因もこれに由来すると思われる。我々が現在できることには限りがある。本来の職務を全うする傍らに自らの分析と考察を残しておこうと思う。

  『虐殺の文法』の構成について仮説を立て、いくつか検証してみた。検証と言ってもその文法の実験など出来るはずもなく、自らの頭の中で想像し対処方法を考える。SF作家が用いるエクストラポレーションというものである。

 信ぴょう性はほとんど無いが、誰かがこの文書を見つけ、その先への道筋をつけてくれることを願うものである。 調査の結果、『虐殺の文法』は一人の人間が広めた、ということが分かった。 (※大きな影響をもたらした、と取れば二人という事になるかもしれない。

 ただ、クラヴィス・シェパードも感染者の一人と見ることも出来る。今回はこの解釈で進めたい) その人間の名は『ジョン・ポール』。本名か偽名かは解らないが個人を識別するために、そのまま使わせてもらう。その人間が世界各地を周り、『虐殺の文法』を用いて『ことば』を紡ぎ、その地域一帯に戦乱を発生させた、ということだ。 (※誰が調査を行っているのか、ということは割愛させていただく。生き延びようと必死な者達のあがき、と思ってもらいたい) ネットの何処かに『虐殺の文法』を生成するエディターがあるという話だが、アメリカ各地のネットインフラはほぼ壊滅状態であり、データが保存されているで あろうサーバも無事とは思えない。簡単にコピーを取ることが出来ないようなプロテクトがかけられていたと予想されることから、このエディターは失われたと 見るべきであろう。

 そこで、現状知りうることから『虐殺の文法』について探りつつ、その構造を解析しようと試みた。その結果、大きな二つの要素を見つけ た。

(1) 文法の生成方法

  発現されている効果から見れば、ほぼ一つの思考に収束している。人が生み出した知恵、と呼ぶべきかもしれない。 良く言えば『優しさ、思いやりの精神』。悪く言えば『責任の回避、擦り付け合い』である。 とても単純に表すと(当然、現実は違う)独裁者が虐殺をする場合、民衆となるものが必要である。その上で独裁者が虐殺をすべき『敵』が必要となる。

独裁者の思考パターンは次のようになる。

『これは民衆のためであり、民衆がそれを望んでいる』。

民衆の思考パターンは次のようになる。

『これは政府と独裁者が望んだことであり、我らはそれに従わなくてはならない。生きる為に政府と独裁者を支持する』

敵とされる者達の思考パターンは次のようになる。

『虐げられた民衆のために政府と独裁者を倒す。即ち我らを攻撃する者は全て敵である』

 人間の生存のための機能ではあるが、両刃の剣であることを利用して『虐殺の文法』を混ぜ込み、戦乱を発生させるわけである。 つまり『虐殺の文法』の特徴は、『誰かが責任を負ってくれる』ということをほのめかす文章を生み出すのである。その上でそれぞれが持つ欲求を強くする方法をとる。 ここまで解ってしまうと、エディターは最早必要なく、あらゆる言語に対する文法をアドリブで生み出すことも可能だ。その助けとなるのが検索エンジン等で利用が顕著になっていた論理演算の手法『論理積(AND)、論理和(OR)、否定(NOT)』とコンピュータの内部のビット演算『減算を加算で処理する』手法である。 その方法は、

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(2) 受け取る側の意識

 もう一つの要素は受け取る者の意識の切り替えである。筆者が見るところ、ジョン・ポールが行っていた行為はこちらに重点が置かれていたように思う。『虐殺の文法』を受け入れやすくするためには、そのことばの数々がそれぞれを肯定していると思わせることが重要である。 その方法は、 *****************************************************************************

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2.対処方法

 現状『虐殺の文法』への対処方法としては『英語を使わないこと』ということになるだろうが、ジョン・ポールが様々な地域で活動していたことを見ると、多数 の言語にこの文法が感染し、処理できぬまま独り歩きを続けているものと考えられる。ウィルス感染の封じ込めの如くどうにかなっていることも考えられるが、 今後『新種』が発生しないとも限らない。そのための対処を考えた。 ヒントとなったのは、ジョージ・オーウェルという作家が書いた小説『一九八四年』である。

 その世界のオセアニアの公用語『ニュースピーク』というもので、 思考の範囲を縮小するものとされている。要するに文章を幾つかまとめ、それを一つの単語で表すのである。思想統制に使われる酷い手法だが、防御手段として は有効である。 まず、前項に示した兆候が言葉の端々に現れ始めたら、自分が話す言葉に注意を向ける。その際に話そうとする言葉を『ニュースピーク』方式で短くまとめ、実際にことばにして話す文章と対応付けることを試みる。 (※何を言っているか解らないと思うが、とにかくやってみることから始めて欲しい。自分が発することばの感覚を基に、自分なりの防御手段を構築する。それは各々にしかできない。そして命がかかっているのだ。) やや無茶な方法だが、おそらく効果はある。あることばが消えれば、そのことばが表す概念も消える(らしい)。他者と自分の関係を維持しつつ、それらを基に 攻撃に至るものも消すことが出来るだろう。だが、当然それでは日々の生活が成り立たない。成り立つようにするものが『ニュースピーク』と『二重思考(ダブ ルシンク)』である。 つまり現状の言語から独自の『ニュースピーク式言語』へ徐々移行し、尚且つ通常の言語を話していると思考する。それが出来れば当面の危機は回避される。 (※当然、理想論である。現実はそううまくはいかない。各々の知恵が試される。)



~少々脱線するが、希望的観測への道筋も含む。 この手の手法は人類の歴史上数多く見られたことである。いわゆる『略語』の類は世界各地にある。アメリカの組織に顕著な三文字で表されるものなどは、それ自体が代名詞と化している場合もあり、動詞への変化も可能と思われる。 そして興味深いものがユダヤの秘奥義『カバラ』である。重要な秘密を隠すために使われる手法が、ゲマトリア、ノタリコン、テムラー、というもので、それぞ れが数値変換法、省略法、文字置換法である。言葉遊びの類も含むようだ。このうちのノタリコンで表されるのが、キリスト教の祈りの言葉『アーメン』であ る。もともとは『アドナイ メレク ナーメン』で、意味は『主そして信仰に賢き王よ』ということらしい。 これだけ馴染みのある物が略されてどうにかなっているなら、日々の生活で使われることばもどうにかなるのではないか、と考えている。~  



3.回復方法、もしくは免疫

 『虐殺の文法』は一定期間効果が見られなかった場合、死滅すると考えられる。言語体系が変わり、人の意識から虐殺へ向かう思考が薄まれば広がりようがない からである。ただ以前と同じ言語に急速に戻すと、それと同時に復活する可能性は高い。その対処方法のヒントも作家の著述から見つけた。 アーシュラ・K・ル・グウィンという作家が記したところによると、言葉とはリズムである、という事だ。つまり、言いたいことを頭に浮かべて、自分が心地よいと思うリズムで声を発すると自然と伝わるものになっていく、ということらしい。 言語の回復、というとややおかしいかもしれない。何をするかと言うと、独自に作り上げた『ニュースピーク式言語』を基に、新たな言語体系を自分たちで作り上げるのだ。当然相当な時間を要する。だが、やって行くしかない。言えるのはこれだけだ。



~再び脱線するが、希望的観測への道筋も含む。 ここまで考えてみると、バベル以前の『共通言語』についての仮説が立ってしまった。つまりその『共通言語』では『文字』に当たるものがとても少なく、それ を各地域で工夫して表現方法を模索していくうちに枝分かれしていったのではないか、という事である。その文字はもしかするとDNAの塩基配列のように四つ だったとか、デジタルの如く二つだったかもしれない。数字の場合も線を引くだけの画線法より、アラビア数字の方が『便利』であるという事で(一部の)主流 になっているので、派生と自然淘汰が繰り返されればことばを取り戻すことは可能と信じるものである~



Written by Luca Magnelctri

Score of Infinite Symphony

色々とまとめたもの

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